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長岡・機那サフラン酒の美しすぎる蔵へ
Categories: 建築

仕事で新潟市に行く機会があったので、かねてから新潟に行ったらやってみたかったことの一つ、酒蔵見学のため長岡に立ち寄ってみた。
長岡の一つとなりの駅、宮内には、上杉謙信が活躍していた頃からという、新潟最古の歴史を誇る酒造、吉乃川があり、平日は利き酒付きの無料見学(要予約)も実施しているのだ。ここは数々の受賞歴のあるすばらしい酒造メーカーで、とても美味しい限定のお酒も買えるのでおすすめだけど、今日はそのはす向かいにある別の酒造メーカーのお話。

吉乃川の敷地内にある「酒造資料館 瓢亭」で、蔵や町の歴史の説明をして下さった方が、帰ろうとする私に、「せっかくここまで来たなら、絶対に見た方がいい」と強く推薦してくれた知られざる名所は、明治時代に養命酒とトップを競ったという薬用酒「サフラン酒」の蔵元。かつて大人気だったサフラン酒は、昭和初期にはハワイにまで進出し、その豪華な屋敷には若き日の田中角栄も訪れたという。

「こんなに芸術的価値が高く、美しい建築が、あまり見向きもされず、手入れもされないで、いずれ壊れてしまうと思うと何とかしたい」と、吉乃川の方は言う。そこまで言うならどうせはす向かいだし、と、ついでのつもりで足を運んでみた。

一目見て息を飲む。
正直、こんなに豪華な、派手な、きらびやかな蔵をこれまで見たことがない。吉乃川の方が教えてくれなかったら、きっと見逃してしまい、見逃したことをしばらく悔いたであろう美しさ。

この芸術的な蔵は、一斉を風靡したサフラン酒の初代・吉澤仁太郎が、贅の限りを尽くして築いたもので、当時は広告塔として利用していたそう。東洋のフレスコ画といわれる「鏝絵(こてえ)」という漆喰のレリーフをちりばめた蔵は、日本一の鏝絵の蔵と賞賛されているのだとか。

描かれているのは、動物や霊獣で、かわいらしいものもあれば、ちょっとぞっとする不気味なものまであり、どれも極彩色で彩られている。
この鏝絵を手がけたのは、近所に住んでいた左官の河上伊吉で、サフラン酒の創業者、吉澤仁太郎と全国各地を巡って構想を練ったというが、特に、越後のミケランジェロといわれる石川雲蝶の彫刻が残る開山堂を頻繁に訪れており、その影響が見られるという。

目を見張る美しさの鏝絵の蔵は、中越地震の後修復されたが、隣にある主屋や、奇岩や貴重な石灯籠などもある庭園や離れは、正直朽ちつつある印象。「手を入れればすごい観光資産になるのに……」と吉乃川の方も残念そうだったが、確かに、このまま修復不可能になってしまうのが心配だ。

かつては、この地を訪れた名士たちも、車を降りてわざわざ見学に来たという機那サフラン酒の絢爛な建物。
約500キロメートル四方に吉乃川を筆頭とする酒や味噌醤油の蔵元が密集する醸造の町「摂田屋」の、知られざる名所は、より多くの人に知ってもらいたいと強く思う場所だった。

吉乃川や、機那サフラン酒など、摂田屋エリアの見所をまとめたトリッププランも合わせてどうそ。

関連リンク:NPO法人醸造の町摂田屋町おこしの会

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