乙女チップス
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夏の上野、クラシック&レトロなお散歩コース

9月17日まで東京都美術館で開催中の「マウリッツハイス美術館展」にフェルメールの代表作の一つであり「北のモナリザ」とも言われる「真珠の耳飾りの少女」も来るとあって、久しぶりに上野に足を運んでみた。

上野公園へ足を踏み入れてまず目についたのが、動物園の表門入口横にあるこのパンダの郵便ポスト!

これは去年の8月に設置されたもので、ここからお手紙を入れるとパンダや西郷さんのイラストが書かれた愛らしい風景印を押してくれるのだとか。
今度は絶対にハガキと切手持参でこなければ!

さて、まずはお目当ての東京都美術館へ。話題の展覧会とあって、平日でもかなりの混雑。私が行った日は、入り口に入るまで15分、中に入っても、真珠の耳飾りの少女だけは特別に列が作られており、間近で見るには20分くらい並ぶ必要があった。休日に行く場合はかなりの待ち時間を覚悟した方が良さそう。
絵画のほうは本当にうっとりするぐらい愛らしい絵だったので満足だったのだが、実はもう一つのお目当ては、展覧会に入場した人だけが入れる特別なおみやげコーナー。
真珠の耳飾りのコスプレをしたミッフィーのぬいぐるみのほか、ミッフィーの限定ミニトートやスケッチブックなども販売中。

ミッフィーという名前を聞くと、冷静ではいられなくなる私は、さんざん悩んで以下の三つをお土産で購入。
ちゃんとミッフィーが真珠の耳飾りをしているのがポイント(耳じゃないところに…!)。

<東京都美術館 東京都台東区上野公園8−36>

その後はお楽しみのランチ。上野公園内にいくつかある老舗料理店の中から、今日は韻松亭をチョイス。昔ながらの和風建築で懐石料理と甘味が楽しめるお店だ。
創業は明治8年で、横山大観がオーナーだったこともあるという。

お昼どきは2時を過ぎたあたりが空いてておすすめ。今日は茶つぼ三段弁当(1680円)をいただくことに。

お豆腐やこんにゃく、生麩やお漬物、お野菜などがちょこちょこといろいろ詰まっていて楽しく美味しい。夏バテの時にもこれならいただけそう!というあっさり御膳。

<韻松亭   東京都台東区上野公園4−59>

おなかが満たされた後は、のんびりと建築さんぽへ。
まずは上野公園近くにある森鴎外の旧邸がある水月ホテル鴎外荘へ。外観はわりとビジネスホテルっぽいさっぱりとしたビルである。


正直、看板がないと完全に見直すぐらい「史跡」感のない外観

ところが、入り口を入ると突然異空間がコンクリートの中に現れる。

隣には普通にガラス張りのカフェや自動ドア付きの廊下なんかがあるので、その過去と未来の同居ぶりも非常にユニークというか唐突ですばらしい。

ここは、鴎外28歳から29歳にかけて約1年半を過ごした家で、舞姫を執筆した時期とされている。普段は会食や宴会、茶会などに使われているそうだが、使われていない時間帯であれば誰でも見学できる。
コンクリートの中に時間ごと封じ込められたかのような、不思議な明治のお屋敷である。

<水月ホテル鴎外荘 東京都台東区池之端3丁目3−21>

水月荘まで来たなら、歩いてすぐのところにある一部の洋館ファンに人気の上田邸(旧忍旅館)も見ておきたい。
木造建築を、モルタルに目地を切って石壁風にみせた洋館で、1929年に建てられた東京都選定歴史的建造物だ。丸い窓や古代ギリシャ建築の列柱様式を取り入れた瀟洒な建物は、忍旅館だったころは「花園町の白さぎ城」と呼ばれ、見学者が絶えなかったという。

<上田邸 台東区池之端3-3-19>

さて、明治〜昭和初期へと時間旅行を楽しんだら、のんびりと不忍池を眺めながら湯島方面へ。


スワンボートの向こうにスカイツリーも見える

途中高層ビルの中にそこだけ時間が止まったかのような豪華な日本家屋が見えてくるが、これは昭和33年に没するまで横山大観の邸宅だった家屋でもある横山大観記念館
お屋敷好きならここと近くの旧岩崎邸庭園はぜひ立ち寄ってみたい。

湯島近くにはレトロ建築ファンにはたまらないビルが二つある。
一つ目は昭和3年に建てられたアールデコ調の建築が優雅な酒屋「堺屋」。

美しい丸窓、クラシックなフォント、骨董品のような昭和モダンビル。ちなみにクローバーの模様のレリーフは朝倉文夫氏の作だそう平成6年には台東区まちかど賞受賞、映画『三丁目の夕日』にもちらっと登場しているとの噂。
<堺屋 台東区上野2丁目12−11 >

この堺屋から歩いてすぐのところには、堺屋の2年後、昭和5年に建てられた黒沢ビルもありこちらも必見。


ラグビーボールを半分に割ったようなユニークな形の窓上の庇と、同じフォルムで切り取られた窓がすてき。入り口や室内随所のステンドグラスは、大正から昭和初めに活躍したステンドグラス工芸家・小川三知によるもの。賑やかな飲食店街の中でひときわ異彩を放つモダンでスタイリッシュなビルで、都の登録有形文化財に指定されている。

<黒沢ビル 台東区上野2-11-6 >

さて、ここまで歩いて来たらちょうど小腹も空くころ。黒沢ビルから歩いてすぐのところにある甘味処「みつばち」でかき氷でもいただこう。

みつばちは創業1909年の老舗で、小倉アイス発祥の地としても有名。そちらの元祖小倉アイスにも惹かれるけど、今日は最近ananでも紹介されたばかりという人気のかき氷「クリームミルフル」を。別料金で白玉をつけることも可能。

たっぷりの練乳とバニラアイスクリームが載り、底にはフルーツシロップ漬けのフルーツ。優しい甘さに、フルーツのほのかな酸味が加わってまさに絶品! 夏の上野さんぽのおやつに激しくおすすめ。ハートをあしらったガラスの器もかわいい。
みつばち 東京都文京区湯島3-38-10>

さて、おやつも食べたし、後は上野駅から帰ろうか……と思ったけれど、もう一軒だけ立ち寄り。昭和ゴージャスな喫茶店として一部で有名で、NHK『美の壺』でも紹介された高級喫茶「古城」である。
この喫茶店がオープンしたのはまだ普通の人たちが海外旅行をするのは難しかった昭和38年。城壁風の壁、豪華なシャンデリア、地下のお店に明るさを添えるステンドグラス……、西洋美術の本を開いては憧れを募らせていたという店主自らデザインした、いわば「夢のヨーロッパ」ともいうべき内装は、海外旅行が身近になった今の時代では思いつかない濃密な異国感をたたえている。

日本最初の喫茶店発祥の地・上野に来たなら、ぜひ訪れてみたい昭和遺産ともいうべき喫茶店である。

<古城  東京都台東区 3丁目39−10 光和ビル B1F>

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