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旧岩崎邸の洋館で、鹿鳴館を想う

湯島駅の近く、上野の不忍池にもすぐの場所、大きな通りと高いビルが連なるにぎやかなエリアに、まるでそこだけ明治のまま時が止まっているかのような瀟洒な洋館がある。
三菱財閥三代目当主である岩崎久彌の本邸であった「旧岩崎邸」である。

明治29年竣工、木造二階建で建築面積は160坪を超えるというお屋敷がこれほどの状態で保存されている例はきわめて珍しく、国の重要文化財に指定されている。

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設計を担当したのは、鹿鳴館を手がけたことで有名なジョサイア・コンドル。彼にとっては中期の作品であるこの洋館は、17世紀初頭のイギリスのジャコビアン様式を基調にしながらも、イスラム風やルネッサンス風など複数の様式を折衷させるなど極めて装飾性が高く、上を見ても下を見ても、豪華で、華麗で、優雅で、美しい。

だから、窓も、床も、手すりも、天井も、暖炉も、壁紙も、柱も、ひとつとして見落とすことができない。そこには美しい文様や、幾何学模様や、彫刻などが丁寧に描かれているから。はぁ…、こんなに細部まで妥協していない家ってすごい…。

鹿鳴館って、きっとこんなふうに訪れる人を圧倒するような、力強い華麗さをたたえた場所だったんだろうな、と想う。旧岩崎邸は、いまでは消えてしまった伝説の洋館を幻視できる貴重な場所なのだ。

ジョサイア・コンドルは1852年ロンドンに生まれ、23歳のときに若手建築家の登竜門であるソーン賞を受賞。明治の日本に招かれ、若干24歳にして現在の価値にして年棒6~7千万円(!)という高待遇で政府のお雇い建築家となった。

河鍋暁斎の門人となるほどの日本オタクで、日本の建築、庭園、舞踏、いけばななど日本文化を愛し、傾倒していった。日本人と結婚し、日本で死んだ。享年68歳。

さて、百科事典的情報はこれぐらいにして、旧岩崎邸の、もうこだわりすぎている細部をじっくりクローズアップしてみよう。

まずは窓ガラス。凝った装飾でガーリーなイメージ。
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階段の柱も見逃せない。

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下は婦人客室の天井刺繍。こよりや綿を用いて立体感や輪郭を出す技法が持ちいられた天井刺繍がオリジナルな状態で残っているのは非常に珍しいのだとか。

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洋館の最大の見せ場でありステージともいえる階段部分にある広くて大きな窓。格子の柄もカワイイ!

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壁紙も見落とせないポイント。このきらびやかな壁紙は金唐革紙といい、塗料、油、漆、金箔などで高度に装飾加工して作られるのだという。もう、恐れ入ってしまうほどの豪華さ。現代では、ただ一人の国選定保存技術保持者である上田尚氏が金唐紙という名で金唐革紙を復元させている。(詳細はこの記事に詳しい)

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ふと天井を見上げても普通に美しい。

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暖炉のところにはイスラム風のタイルが。

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こちらはオイルヒーター。手を抜きません、こんなとこまで。

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バルコニーのこの力強い柱の並び、壮麗であります。
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もう全部紹介できないのが悔しい。目をやるところすべてが、「ぬぬ、おぬしやるな!」といいたくなるほどの真剣勝負で挑んでくる岩崎邸。やっぱり足を運んでその壮麗さを体感してみるのが一番おススメ。大人でもたったの400円で、ひととき、華族の気分に浸れます。

旧岩崎邸庭園

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