乙女チップス
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切手を讃える記念品、初日印と初日カバー

蔵書票を探しに神田の呂古書房を訪れたとき、入り口近くの箱にぎっしり詰まっていた、何やら古い手紙のようなもの。

何に使うものなのか見当もつかなかったが、その封筒の美しさや切手のデザインに目を奪われ、足を止めた。

「それはね、初日カバーって言うんです。記念切手が発売された初日に、専用の封筒に記念切手を貼って、初日の日付入りの消印を押したもので、昔から集めている人がいるんですよ」と、お店の人が教えてくれた。

切手がコレクターズアイテムなのはさすがに知っていたけれど、こんな趣味があったとは全然知らなかった。ひとつの切手の誕生をこんなに丁寧に祝い、消印や封筒をも巻き込んだ手の込んだ記念品にしてしまうなんて! 切手愛好家の愛の深さに感激して、コレクターではないけれど、いくつか買ってみた。どれも500円〜1000円くらいと、小さな美術品+アンティークにしてはお手頃感覚。

上は1958年の第3回アジア競技大会のときの初日カバーと初日印。競技場のデザインがかっこいい。


続いてちょっと変わった初日カバー。二つ折りのカバーをあけると、中から記念切手と初日印が現れる。この飛行機の切手、今見てもすごくおしゃれ。飛行機ファンはたまらないかも。

この初日カバー、もともとは1920年代のアメリカで流行し、世界に広まったという趣味。欧米では「First Day Cover」(ファースト・デイ・カバー)、略して「FDC」(エフ・ディー・シー)と呼ばれ、愛好家も多いという。ちなみに記念切手にちなんだ美しい絵が入った封筒のことは「Cachet」(カシェ)と呼ぶそうだ。このカシェを、郵便局が記念切手が出るたびに毎回発行しているのかと思っていたが、切手の博物館を訪れたときに学芸員の人に聞いてみたら、日本では郵便局以外の版元がカバーを印刷し、記念切手や消印を押した状態で販売していることがほとんどだという。

一方ヨーロッパでは、国や郵便局がちゃんとカシェまで発行しているそうで、「切手の博物館」内にある「世界の切手ショウルーム」(郵趣サービス社)では、そんな海外のFDCも購入することができる。

今回の戦利品の一つ、スイスの現代建築FDC。1100円で、世界の切手ショウルームでは残り一点だったのをゲット!


切手も消印もカシェも、ためいきが出るほどおしゃれ。これを作っているスイスの郵便局のデザイン力はすごい!

もういっこはチェコの美観FDC、2枚セットで840円。こちらもこれがお店で最後の1点。消印のデザインもすごくかわいい!

切手の博物館の学芸員の方は、今では初日カバーは国内ではそれほどポピュラーな趣味ではなくなってきているようだと言っていたけれど、こうして眺めていると、あまりの美しさとバリエーションの豊富さにハマってしまいそう。

何に使うの? と訊かれたら、困ってしまいそうだけども(笑)。

<関連リンク>
切手の博物館
郵趣サービス社
呂古書房

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