そのデザインは「永遠のモダン」と呼ばれ、昭和を代表する作庭家として今も根強い人気の重森三玲。
京都に彼の旧宅を使った美術館があるときき、予約をして訪れてみた。
足を踏み入れると、江戸中期に建てられたという格式ある造りの建物と、大きな石が随所に屹立する端正な日本庭園が現れる。第一印象はあくまで伝統的な、美しい日本の邸宅である。しかし、一歩建物の中に目を向ければ、大胆な市松模様をあしらった襖や、イサム・ノグチによる照明など、現代的な意匠が随所に見られる、まさに「伝統とモダンの融合」のお手本のような空間なのだ。
ちなみにこの家には、近衛文麿が京大生のときに下宿していたとのこと。ある種の育ちの良さみたいなものが漂うこの邸宅には、そんなエピソードがよく似合う。
客人として招かれたような気分を味わいつつ、邸内や日本庭園を愛で……といいたいところだが、実際のところ、私が訪れた日は見学客も多く(大体15名くらいの団体が二組)、わりとベルトコンベアー式な見学を余儀なくされてしまった。今度は平日など混み合わない日を狙って訪れたいもの。
まぁそれぐらいすばらしい、見学客が引きもきらない御宅をちょっとご紹介。
三玲による庭。手前の石は船をかたちどっているそうだ。徳島から取り寄せたという青い石が大胆に配置され、かっこいい!
これは江戸期ではなく、三玲本人が建てた茶室「好刻庵」。この波の形をした一松模様が素敵。
日本庭園や江戸中期のお屋敷など、庶民にはとても真似できないハードルの高さを見せつける重森邸だが、一個だけ、あ、これはちょっと真似したい!と思えたポイントがあった。それが、下の赤い敷石である。うねうねとしたラインが愛らしい!
青い石、白い砂、苔で彩られたクールな空間に、赤く丸みを帯びたデザインの敷石がぴりっとしたアクセントを添えている。このエッセンスだけならいつかは自分の家のどこかに取り入れられそう……な気がする。この敷石は州浜、すなわち海に突き出た浜を描いており、白い砂が海で、敷石は波をかたどっている。
実は美術館入り口のところにもこの敷石があしらってあった。きっと三玲もお気に入りだったんだろうな、と思う。
有名な東福寺の方丈庭園の市松模様の日本庭園(下の写真)も、やっぱり石の使い方がとにかくかっこいい。三玲はやっぱり「石の作家」だと思うわけです。