乙女チップス
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歴史の町・萩であの人のお宅拝見!
Categories: おでかけ, 建築

文化庁の重要伝統的建造物群保存地区に、京都と並んで4地区も選定されている山口県。特に萩は、江戸時代そのままの城下町が高いクォリティで保存されている歴史散歩ファンに人気のエリア。教科書でおなじみの歴史上の人物のお屋敷も多く一般公開されているので、建築好きにも嬉しい「お宅拝見」スポットにもなっている。

さて、まずは「日本の道百選」の一つにも選ばれている、藩の豪商・菊屋にちなんだ「菊屋横町」から探訪スタート。ここは、いま大河ドラマ『龍馬伝』で活躍中の高杉晋作の生家も当時のままに残されていることでも有名な一角。江戸時代は中・下級の武士が住んでいた場所で、いまもほとんど当時のまま彼らの武家屋敷が残されている。

なまこ壁が美しい菊屋通りは、電柱・電灯がなかったらまんま江戸時代。ここではまず通りの名前になった豪商・菊屋のお屋敷を訪問。

今で言う大手商社のように、藩の経営に大きく関与していたという豪商ならではの立派な屋敷。藩が貴賓を迎える際には迎賓館のように利用されていた。写真は高貴な方のみが使えたというお庭の眺めも格別なお部屋。

19世紀初めに作られたという釜場の一角。いまでいうキッチンだが、一家が住めそうな広さだった。

櫛やかんざし、鏡などの装飾品も展示されており、その確かな職人技に、さぞかし高級品なのだろうとため息。でも個人的には、上に紹介している桃太郎の鬼退治人形に感服。鬼がリアル!

続いて、大河『龍馬伝』では伊勢谷友介演じる高杉晋作邸へ。

門をくぐってみる。

ふつうに立派な玄関。

閑静な高級住宅街といっていい菊屋横町に、恥ずかしくない門を構え、それなりに立派なおうちに住んでいた高杉晋作。いざお宅を拝見してみると、いかにも高級官僚の住まいといった雰囲気で、ここで「世の中を変えてやる!」と思うメンタリティの持ち主が育ったとは、容易に想像しにくかったりする。

その高杉邸に保存されている幕末の手配書が隠れた見どころ。全く似ていない晋作の似顔絵で捕まえろと言われた幕吏たちがちょっと気の毒。

続いて、高杉邸から徒歩で数分の木戸孝允邸へ。大河では谷原章介が熱演中。実物の孝允も甘系ハンサムだったので、これははまり役だと個人的に思っている。

木戸邸がある江戸屋横丁。江戸屋というこれまた豪商にちなんでつけられた名前だとか。

当時は珍しかったという二階建て。

個人的には高杉邸もじゅうぶん立派だったけど、こっちのほうがさらに広くてよいお宅。

正直、首都圏のうさぎ小屋育ちとしては、二人の志士の生家を訪問してみると、革命児というよりは「いいとこのお坊ちゃん」のイメージしか沸かなくなってしまう。しかし、ここはそれでも中・下級武士の住む一角。では、上級武士はいったい……? ということで、藩の重臣の屋敷が並んでいた旧萩城三の丸地区、外堀の内側へと足を伸ばしてみる。


1530石取りの上級武士、周防家の長屋門。

確かに、お屋敷度がさっきより数段増しているのは否めない。これほど長く、迫力たっぷりな土塀って、東京だとほとんどお寺ぐらいですよね。これ、みんな人んちなのです。

萩を訪れて肌で感じたのは、ヨーロッパのような階級社会が、江戸時代の日本にも確かにあったのだな、ということ。碁盤の目のように整備された町は、身分ごとに住むべきエリアが厳正に決められ、道を一本隔てると、家の大きさも、門構えも、歩く人も、空気すらも変わるような場所。


武士のエリアから少し離れた浜崎地区は商家町として伝統的建造物群保存地区に指定されている。こちらはまたぐっと違った雰囲気

菊屋横丁をぶらついていたときは、この美しい調和に満ちた町のそれなりに立派な家々から、明治維新を引き起こすことになる革命のエネルギーがどう湧いて出たのか理解に苦しんだけれど、この階級ごとにはっきりと区別された、美しいけれど流動性のなさそうな景観を前にしてみると、中・下級武士階級の若者たちの閉塞感や怒りというのが、なんとなく理解できる、ような気がした。

大河の登場人物たちの心情を妄想しながら江戸時代へのタイムトラベルが楽しめてしまうのが、歴史都市・萩の醍醐味なのだ。

10月1日〜11日には、女子も楽しい「着物ウィーク in 萩」も開催されるそうなので、映画のセットみたいな城下町をキモノでそぞろ歩いてみるのも楽しいかも。

<関連リンク>
ぶらり萩あるき
高杉晋作誕生地
木戸孝允旧宅

<おまけ> おすすめの夕食。

日本海に面した萩はお魚もおいしい。写真は味・値段・ホスピタリティとも大満足だった鮮魚店直営の居酒屋「海鮮食堂 十八番」の刺身盛り合わせ。

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