乙女チップス
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これぞパリの手芸店!な「ル・コントワー」

日本でパリの手芸店のレポートをしたところで、行ける人は限られているし、あんまり実用的ではないかもしれない、と思うこともある。

私の場合、手芸店というのは「何かを買いに行く場所」というよりも、「雰囲気を味わう場所」であり、ちょうどファッション雑誌を眺めるだけで楽しいように、ただその佇まいをうっとりと味わうだけで幸せ、という「手芸店萌え」なので、今回は手作りファンだけでなく同じ嗜好の方(どれくらいいるかは不明ですが…)に向けて書くことにします。
あまり実用的ではないかもしれないけど、写真で雰囲気を感じとるだけでも楽しい! という方に読んでいただければ嬉しい。

というわけで、前置きが長くなったけど2011年版パリの手芸店レポート、スタート! トップバッターは、パリ9区の昔ながらの商店街に佇む小さなメルスリー、「ル・コントワー」(Le Comptor)。日本の女子が「パリの手芸店」を妄想したときのイメージにおそらく最も近い、クラシックかつ可愛らしい、雰囲気抜群のお店です。

味わい深いあめ色の木製の棚が並ぶ、お店そのものがアンティークのような佇まいもパリの手芸店ならでは。それもそのはず、ここル・コントワーは、1861年(150年前、日本なら江戸時代!)にテーラーとしてオープンし、1930年代からは手芸店として地元の人達に愛されてきた正真正銘の骨董品といえる店舗を利用しているのだ。
現オーナーのバーバラさんが売りに出されていたこの店舗を見つけ、2004年にル・コントワーをオープン。バーバラさんはもともと法律系の仕事をしていたが、手作り好きの家族の影響で子供の頃から手芸が大好き。法律から手芸へ、全くの畑違いの分野への転身は、一人で仕事が出来る、手で作る仕事がしたかったからだそう。

商品は、昨今のパリでの編み物ブームの影響か、毛糸売り場が約半分を占める。バーバラさんの毛糸に対するこだわりは天然素材を扱うことと、新しいブランドの毛糸を積極的に入れること。自分が着る色、あざやかな色よりはシックなものを選ぶことが多いそう。

取り扱うブランドは、ローワン、デビー・ブリス(共にイギリス)、ホルスト・ガーン(オランダ)、Noro(野呂英作=日本)、ハブ(NY)、Filatura di crosa(イタリア)フォンティ、ブトンドー(共にフランス)など。

残りの半分を占めるソーイング系売り場にはイギリスのローグ、リバティ、ドイツのブランドの生地などがならび、ボタンなど手芸小物も充実。

「もともとは刺繍をやるお客さまが多かったけど、最近は編み物の人が増えたわ。そうそう、日本の型紙がフランス語に翻訳されて入ってきてからは洋服を作る人も増えてきたのよ」とのこと。日本の手芸文化がパリのハンドメイドファンに影響を与えていたとは、なんとなく感慨深い。実際、他の手芸店でも日本の手芸本(日本語のまま置かれている)を見つけることも多かった。型紙や詳細なステップ説明図など、あれほどこまやかに誰でも出来るように親切に編集された本はフランスには少ないそうで、日本の手芸文化の底力を異国で感じた瞬間。

ただ、ここル・コントワーで充実しているのは日本の手芸本ではなく上に掲載したような欧米の毛糸メーカーのカタログ。これらのカタログでデザインのインスピレーションを得て、自分で作り方を考えて編む人が多いそう。ここらへんは、きっちりマニュアルがあったほうが作り易い我々とはちょっと違うところかもしれない。

ショーウィンドウの手芸グッズのディスプレイも楽しく、その内装を眺めるだけでもうっとりの「ル・コントワー」。自分の部屋に小さなアトリエを作りたい手芸乙女が参考に出来るエッセンスがいっぱい詰まったパリのかわいい手芸店だ。

ル・コントワー Le Comptor
26,rue Cadet 75009
営業時間:火〜土曜 11〜14時 14時30分〜19時
※情報は取材時のものです。訪れる際には念のため事前に確認を。

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