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天井の装飾を見直してみる
Categories: インテリア, 建築

絵や置物などが映えるぐらいの、広々とした空間があるおうちに住む人は、日本の住宅事情からするとそれほど多くないだろう。たんすや本棚や家電がひしめく壁を眺めて、ここに何かを置いたところでかえってゴチャゴチャするよなぁ、ということで、私自身もずっと装飾品に関してはわりと消極的だった。

でも、趣味の洋館巡りなどをしているうちに、狭い狭いと思っていても、実は家の中にはまだ十分装飾可能な白いカンバスがあるではないか、と気づかされてしまった。そう、天井である。


札幌にある1869年に建てられた清華亭の、桔梗をデザインしたメダイオン。

洋館を巡ってみると、上の写真のように、シャンデリアを吊るす場所を美しく飾るメダイオンをよく見かける。このメダイオン、たいていはショートケーキのデコレーションみたいですごくかわいいのだ。


こちらは駒場の旧前田公爵邸の天井。

横浜のホテルニューグランドの天井。幾何学模様のすてきなデザインが施されている。

天井も、立体的なデザインを施すとこんなに雰囲気が変わるものか、と見とれてしまう。自分の記憶を掘り起こしてみても、天井はいつも、何の変哲もない板か、白い壁紙など殺風景なデザインだった。こんなに広いカンバスが、こんなに身近にいたなんて、ああ、近すぎて気づかなかったよ……!

iwasaki
上野の旧岩崎邸の天井刺繍。こよりや綿を用いて立体感のある刺繍に仕上げる技術は現代では再現が難しい匠の技。


アールデコの芸術品のようなNYのクライスラービル。天井も手を抜いていません。

グランドセントラル駅の天井には星座が描かれている。

ビルや公共施設まで来るとちょっと個人が真似できないスケールになってしまうが、天井画やマーブル模様の天井など、エッセンスとしては普通の住宅にも取り入れられそう。


上の二枚はふたたび旧岩崎邸の天井。さすがジョサイア・コンドル。とにかく豪華です。

もしも我が家にこんなに美しい天井があったなら、まるで空を見上げるみたいにいつも眺めてしまいそう。家を建てるときは天井のドレスアップも忘れずに考えなくちゃ、と美しい天井の写真を眺めてしみじみ思うのです。

<11月1日追加> 下の写真は、吉屋信子の旧宅でもある記念館の天井。和室の天井にもしっくりくるシンプルなデザイン。目地のところにあしらわれた銀色の彩色は清潔ですがすがしい印象。

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