乙女チップス
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美しいニューヨークのアール・デコ・ビルディング
Categories: おでかけ, 建築

今月号の『カーサブルータス』がニューヨーク特集だったのに刺激を受けて、今回はかの地の美しいビルたちの思い出を少し。

ニューヨークを訪れていちばん感動したのが、1920〜30年代に建てられた素晴らしいアールデコなビルがあちこちに現役で残っていること。実は私は、金の匂いがする、というと下品だけども、財力を背後に感じさせる絢爛豪華なものに弱い。わび、さびに惹かれるようになるにはまだまだ修行が足りないのであります。これらニューヨークのアールデコ・ビルディングたちは、アメリカの1920年代、ローリング・トウェンティーズがどれほどすさまじく景気が良かったのかを見せつけるように今も輝きを失わず、圧倒的なきらびやかさで私の弱点をぐいぐい突いてくる。ああ、本当にため息が出ちゃうのであります。

さて、そんな美しいビルたちを一つずつ見学していこう。

こちらは1930年に建ったデイリーニュース・ビル。Daily Newsは全米トップクラスの発行数を誇る日刊紙で,米国最初のタブロイド紙でありNYCの代表的な大衆紙。スーパーマンのクラーク・ケントが記者として通勤するビルとしても有名。建築を手がけたのはアール・デコの高層ビルを多数手がけたレイモンド・フッド

続いて、クライスラービルのすぐ近くにある1929年に建てられたチャニン・ビル。不動産デベロッパーのIrwin S. Chaninの元本社ビルで、グランドセントラル周辺では最初にできた高層ビルだそう。低い階層部分の壁面を曲線が印象的な植物モチーフのテラコッタが覆い、その上に続く直線的なレンガの壁と窓と対照をなし、瀟洒でありながらもちょっとかっこいい、という絶妙なデザインになっている。

ビルの中のラジエーターカバーや彫刻などは、アール・デコなデザインを得意とした彫刻家Rene Paul Chambellanが手がけたもの。

床も天井も豪華な装飾に覆われており、オフィスビルというよりも宮殿といった形容詞がふさわしいチャニン・ビル。こんなところで働いてみたい!

さて、続いては、ニューヨークのアール・デコ建築の高層ビルといえばこれ! と誰もが思う王者クライスラービル。設計はウィリアム・ヴァン・アレン。1930年に自動車メーカーのクライスラーの本社ビルとして建てられ、当時は世界一高いビルだった(わずか一年後にエンパイア・ステート・ビルに抜かれてしまう)。ラジエーターグリルを模した尖塔は、すべて自社自動車工場から調達したというステンレススチールで出来ており、80年経った今でも輝きを失っていない。

天井画をよく見るとクライスラービルが描かれている!

豪華な大理石の床、寄木細工のエレベーター、どこに目をやっても手抜かりのないアール・デコの芸術品。今もふつうにオフィスとして使われているため、一階ロビーしかうろつけないけど、その豪華さは堪能できるはず。

そして最後はロックフェラーセンターの床やら柱。通りすぎただけだけど、華麗というよりカッコいいといった表現が似合うデザイン。この黒い幾何学模様の床のデザインとか、ちょっと真似したい。

旅行中は、目先のもの――食べ物や雑貨類、ファッション小物など――に目を奪われてしまい、それが結構日本にも来ているものだったりするから、妙な既視感 に襲われて「どこも同じだなぁ」などと思ったりもしたけれど、帰国して思い出したときに、一番鮮やかによみがえり強烈に心をゆさぶるのが、モノではなくその周りにあった風景や雰囲気。モノは輸入できても、空間そのものの体験は決してポータブルにはならないから、そこにしかないものを求めて、また行きたくなってしまう街、ニューヨーク。

さて、最後にアール・デコがらみでプチ情報。日本国内で随一のアール・デコ建築の呼び声が高い、目黒の東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)の年に一度の建物公開は3月25日から始まります! 私も前に行ってねちねち撮影したのですが、本当に美しい邸宅なので、興味のある方はぜひ! 4月11日まで。

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