乙女チップス
カワイイもの、古いものを集めた乙女派ウェブマガジン
SLやまぐちで乙女鉄道の旅

この春、一人部活である「伝統的建造物群保存地区愛好部」の活動の一環として、ふらり萩・津和野を訪れた私。
江戸時代に迷い込んだかのような萩の大規模な武家屋敷郡、津和野のこぢんまりとした風情ある町並みを堪能したのち、せっかくなので津和野から新やまぐちまでSLに乗ってみることにした。

鉄子でも女子鉄でもないのだけど、やっぱり古いもの全般に弱いので、クラシックな蒸気機関車の外観を見るとどきどきと胸が高まる。

外観だけでも昔の日本にタイムスリップしたような感覚に襲われるのに、このSLやまぐちは、さらに車内でも時間旅行が楽しめる工夫が凝らされている。5両編成の列車は「レトロ客車」と称して、1両ずつ明治〜昭和に至る各時代の客車をイメージしてデザインされているのだ。

正直、乗る前はいかにも観光客目当ての薄っぺらいアレンジなんじゃないかと若干危惧していたのだけど、これがいい意味で期待を裏切るクォリティ! この内装を手がけた人の職人気質、凝り性ぶりにはただただ感激。

それでは、一両ずつパトロールしていきましょう。

1号車 展望車風客車

展望車付きの1号車は赤でコーディネイトされた内装。椅子の柄もガーリーでかわいい。

2号車 欧風客車

19世紀のオリエント急行をイメージしたというゴージャスな車両。座席にはステンドグラス風の装飾、天井の模様も手が込んでいて、列車の旅が憧れだった頃の内装を表現している。

3号車 昭和風客車

実は私が特に意識せず予約した車両がこれ。シンプルで素敵だけど、せっかくなら1号車か2号車で思い切りガーリーな気分に浸りたかった気も……。旧型の電灯と板張りの床、灰色の座席が、いかにも昭和な雰囲気。

4号車 明治風客車

日本の鉄道開業当初のイギリス製客車を参考にしたという、なんというか、ダンディな内装。革張りの椅子がかっこいい。

5号車 大正風客車

「夢見る大衆」の時代をうぐいす色の座席が明るく表現。夢二風の女の子なんかを座らせて撮影したくなる雰囲気。

というわけで、5両それぞれがとてもコンセプチュアルで完成度が高く、どの内装も「カフェや喫茶店をやることがあったら参考にしたい!」と思うクォリティ。

しかし、SLやまぐちの素晴らしさは外観・内装だけではない。実はこの列車ならではの貴重な体験があるのである。

普通、列車の旅というと、我々は「車窓から風景を眺める」のが一般的。だが、みんな大好きSLやまぐちとなると、「風景であるあちら側からも眺められる」という経験を何度もすることになるのだ。車窓の向こう側にいる人たちは、カメラを構えて立っていたり、手を振っていたり、腕組みをしてこちらを眺めていたり、ただうれしそうに見つめていたりする。一瞬の出会いが表れては消えていく。何度も何度も。

列車の窓を挟んでもう二度と合わないかもしれない見知らぬ人たちと何度も見つめ合う。こんなに大人気の列車に乗ったことのない私は、そんな体験も胸がいっぱいになるぐらい感動的だった。

<関連リンク>
SLやまぐち
津和野町観光協会

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