乙女チップス
カワイイもの、古いものを集めた乙女派ウェブマガジン
女子が企画の乙女な市、品川てづくり市

東海道五十三次の第一の宿場町、北品川。江戸時代は約1600の店が連なる一大歓楽街だったこのエリアにある、1187年に源頼朝が創建したという古社である品川神社で、2009年1月から「品川てづくり市」がスタートしている。

神社の青空市、というと、骨董市みたいなものか、中高年をターゲットにしたハンドメイド作品のバザーをイメージしていたが、訪れてみてびっくり。そこはまるで女の子が大好きな路地裏の雑貨店そのもの。ここは中目黒のハイジか、神保町のAmuletか?

雑貨、アクセサリー、ガラス、かご、文房具…。売っているものの多くはターゲットが20-30代の女性というかんじ。『雑貨カタログ』『くりくり』『天然生活』などの愛読者なら間違いなくファンになってしまう市だろう。

素敵なお店もいっぱいで、とても紹介しきれないが、たとえば、以下は、花をモチーフにしたアクセサリーや小物のyou-sa HANAKANMURIのお店。紅茶やたまねぎなど、自然の素材で染めているという優しい色は、ふんわりとした生地ととてもマッチしていて、本当にロマンティック!

続いてロシアの布を使った雑貨などのCOCOЯ(ココヤ)さん。店主いわく「ロシアのおばあちゃん」風の生地が本当にかわいい! 「でも最近はこういう布はロシアでも人気がなくなってきたみたいで、なかなか手に入らないんですよねぇ」とのことでこんなにカワイイのに心配です。商品を買うと、ロシアの切手をカラーコピーしたというカワイイシールつきで梱包してくれるのもうれしい。

動物園の人気者が勢ぞろい! R E P L Yの消しゴムハンコ。うさぎやネコはどこかで手に入りそうだけど、ワラビーやコビトカバにはもう会えないかもしれない……とセイウチを購入。暑中お見舞いに涼しげなインクでペタンとやる予定。

少女まんがについていたふろくみたいな、ちょっと懐かしいタッチが魅力のはたのりこさんのイラストによるカード。ねこ、うさぎ、おはな、大好きなモチーフがいっぱいで、理屈ぬきにかわいい~。

……と、挙げていくとキリがないくらい女の子が大好きなカワイイ雑貨が大集合の品川てづくり市。いろんな作家が集まる市で、これほど完成された世界観を生み出すことができたのはなぜなのか? そのミラクルの理由を聞きたくて、品川てづくり市事務局の薄葉聖子さんにインタビューを試みた。

――まるで吉祥寺や中目黒の雑貨店みたいなトーンを実現している市でびっくりしました。なぜ、ある種の世界観を共有するクリエイターをこれほどの完成度で集めることができたのでしょうか?

そう言っていただけて、作家さん達も喜んでくれると思います。まさしくそんな空間にしたかったんです。「大好きな品川宿に、自分が行きたい場所をつくりたい」が目標の1つでした。
もともと好きだった雑貨屋・カフェ・個展巡りをする中で、ある作品にひとめぼれし、その作家さんの人柄に触れて、「一緒になにかやりたい」と思い始めました。少しずつ頭の中にイメージが浮かび、大好きな地元・品川宿とつながった発想が生まれたんです。その第一歩になった作家さんから、「あなたに合うと思う作家さんがいるよ」と教えられ、たくさんの方々といろんな場所で会って、話して、現在のかたちの基礎となるイメージが出来上がっていきました。

――いわば第一歩となった最初の作家さんとの出会いから広がった世界観といえますね。

  神社の灯篭の鹿までが可愛く見えてくる!

  神社の灯篭の鹿までが可愛く見えてくる!

そういえばそうなんですが、作家さん・地元の方々・事務局など、関わったみんなが「あったらいいな」って漠然と抱いていたものがちょっとずつ形になったような気がします。

――まだ始まって半年足らずですが、どれくらいの人が訪れているのでしょうか?

正式には統計はとっていません。第1回目開催(2009年1月11日)が初詣・七福神巡りの時期だったので把握できたのですが、約3800~4000人の来場があったと聞いています。
売上などは、各作家さんの管理なので事務局では把握できていません。

暑い中も寒い中も、生き生きと活動に取り組んでいる作家さんの姿に触れると、私たちは、作品をつくることはできないけど、この市をいいものにして、たくさんの方に来ていただき、お買い物を楽しんでいただけるように、最大限の努力をしようと思います。
そう思わせてくださっているのは、楚々として生きる作家さんたちの存在で、本当にそのことを想うだけで泣けてくるほど感動的です。

――世界観だけでなく、クォリティの高さにも感動しました。出展するための審査はやはり厳しいものなのでしょうか?

出展希望者は審査OKになると、「品川てづくり市の会」の会員として登録させていただくのですが、4月中旬の時点で、登録者は180名です。
毎月たくさんのお申込をいただいていたのですが、出展スペースに限界もあり、従来の作家さんが出展しづらい事態に陥ってしまうことを懸念して、現在は新規申込を休止しております。秋くらいに限定数で新規募集を再開する見込みです。審査方法については、とくに公表できるものはありませんが、ホームページやブログなどで、作家さんの方向性までを拝見して審査させていただいています。いただくメールの文面などからも、お人柄は伝わってくるので、ツールとしてはデジタルですが、気持ちの上では、とことんアナログにこだわっています。

――クリエイターにとっては雑貨店オーナーなどとの出会いの場にもなっているように感じました。

毎回、スカウト風な方はお見えになっているようですね。残念ながら私たちへのコンタクトは少なく、直接アプローチされているのを作家さんからの報告で知るような形です。

もしも、私たちへもお問合せをいただけるようになったら、個々の作家さんの特性や、彼らの背景にあるものなど、ご紹介・説明などもさせていただけると思っています。
才能があるのに自分PRが不得意な作家さんも多いんですね……。彼らを知れば知るほど魅力的な世界観を持っていることがわかり、もっともっと多くの方々に宣伝させていただく一端を担えればと強く願っています。急に忙しくなりすぎてもうまく対応するのが苦手なタイプの作家さんも多いので、事務局としては、彼らと世の中とを繋げるパイプのような存在でありたいです。

――今後の展望などはありますでしょうか?

てづくり市を運営するにあたり、作家さんたちから「出展料」を集金するのですが、品川神社・地元商店街のご理解を得て、みんなの「出展料」は事務局で積み立てを行っています。
目的は、商店街に作家さんたちが自由に作品発表ができる場所(ギャラリー)を開設すること。

作家さんからの話で、個展等を開くにあたっては、その費用負担があって厳しい状況だと知りました。
品川神社での出展はもちろんですが、品川宿に若者を応援する環境を根付かせたいと願っていたので、マスコミの方々へのアプローチも含めて、私たちにできることから積極的に取り組んでいこうと思っています。

じつは、その第一歩として、商店街に『クロモンカフェ』という空間をオープンしています。
品川てづくり市の作家さんたちが、壁のペンキ塗り・しっくい塗り・襖絵~を名乗り出てくれて、使用する食器や展示している絵画など、いたるところに彼らの作品があって、品川てづくり市では見ることができない彼らの世界を堪能することができます。

まだまだ駆け出しで、いっぱいいっぱいな私たちですが、やりたいことは明確に持てているので、半年後、一年後、十年後をとっても楽しみにしています。

――すばらしいですね! 私も毎月足を運んでみたいと思います。今日はどうもありがとうございました。(2009年5月15日)

おまけの写真は、品川神社の期間限定の葵のお守り。神社の中神輿の横棒をご神体として納めてある。黒、赤、金という大人っぽいゴージャスなデザイン! 在庫がなくなり次第終了とのことなので、6月のてづくり市の際には覗いてみるといいかも。

品川てづくり市
この記事に掲載された作家さんが毎回出店しているとは限らないので、気になる方は、サイトで出展者リストをチェックしてからお出かけを。

品川神社(wikipedia)

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