乙女チップス
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エーリッヒ・メンデルスゾーンのらせん階段

以前、「フォトギャラリー、パリの美しい階段」で、洋館における最大の見せ場は階段である、とその「階段愛」を語ったのだけど、今回はベルリンのすてきな階段のご紹介。

このかっこいいらせん階段は、1930年に建てられたベルリンにある「ドイツ金属労働者組合本部」のもの。建築家はエーリッヒ・メンデルスゾーン。E・メンデルスゾーンは、表現主義建築の代表的作品とされるアインシュタイン・タワー(ポツダム)を手がけた人物。

ベルリンまで来たならポツダムまで足を伸ばし、この風変わりで印象的な塔を見たかったけれど、あいにくしつこい風邪を引いてしまって気力がわかず、かわりに、ベルリンの中心部にあるこのビルを訪れて「ドイツ表現主義建築」を味わってみることにした。

外観はすっきりシンプルで、アインシュタイン・タワーと比べると普通のオフィスビルに感じるが、正面の丸くえぐられたようなデザインがこのシンプルなビルに面白みを添えている。山田庸子さん著『ドイチュラント』によれば、ビル正面上部にぽっこりと出ている円柱形の突起部分は会議室の一部になっていて、かろうじて人がひとり入れるスペースに立てば「ここから眺める景色は前方遮る物なく、まるで舵をとったような気分にさせてくれる」そう。うんざりする会議に出ていても、ふと立ち上がってこの操縦席から外を眺めれば、きっと自由を感じることが出来るのだろうなぁ、とちょっとうらやましくなるオフィス。

しかし、個人的には一番ぐっと来たのは、このらせん階段である。

ただの曲線ではなく、鋭利な刃物ですっと切り取ったようなエッジがあしらわれた曲線であり、カットされた面が作る幾何学模様の影が美しい。天井からつり下げられた照明は、理科室にある実験道具のガラス器具のようにシンプルで機能的で「理系」な雰囲気を漂わせており、ロマンティックで優美な印象になりやすいらせん階段をシャープですっきりとしたものに変えている。照明の柱に使われている金色の鉄柱も、まるで何かの機械の一部のように、強くたくましい。

あまりにかっこよくて、今では私のノートPCの壁紙になっているこのらせん階段。大きいサイズの画像もご用意したので、良かったら壁紙にどうぞ

前出の山田庸子さんの『ドイチュラント』には、このドイツ金属労働者組合本部以外にもメンデルスゾーンの建築がいくつか紹介されている。ベルリンにあるシアター、Schaubühneは彼の代表作の一つだそうで、見に行きたかったなぁと今頃後悔。

ちなみに、このビルの近くには、現代建築として有名なユダヤ博物館もあり、通り沿いにはおしゃれなマンションが建ち並んでいるので、建築散歩におすすめのエリアだ。


ユダヤ博物館

<ドイツ金属労働者組合本部>
Haus des Deutschen Metallarbeiterverbandes(IG Metall Verwaltungsstelle Berlin)

Alte Jakobstraße 149
10969 Berlin, Deutschland

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