乙女チップス
カワイイもの、古いものを集めた乙女派ウェブマガジン
野草を探しに、ご近所という名の花畑へ

薔薇園とか、芝桜のじゅうたんとか、江戸名所図会にも描かれた歴史ある藤棚とか、花の名所のにぎわいぶりが連日ニュースになる春爛漫の5月。

もちろん、花の絢爛さに圧倒される「ザ・名所」も大好きだけど、混雑、遠出がちょっとだめかも……という気分のときは、私はカメラをぶらさげてぶらぶらとご近所へ繰り出す。

どんなにごみごみとした街中であっても、電信柱とマンションだらけの住宅地であっても、野草の名前を覚えれば、そこはもう花畑に変わるからだ。

これはアカカタバミ。コンクリートや砂利道などに咲く野草で、花言葉は「輝く心」だそう。確かにごつごつした場所に精一杯咲いているその「ど根性」は輝いているといえよう。そしてそんな己の強さを隠そうとでもしているかのような、可憐きわまりない葉っぱとお花のかたち。ああ、女はこうありたいものです。

細い花びらがいっぱいのこちらはハルジオン。花言葉は「追想の愛」。いまでは都会ならどこにでも咲いているといっていいほど「雑草」の代名詞になっているこの花の歴史は、Wikipediaによると意外に浅く、北アメリカから日本に入ってきたのは大正時代の中頃なんだとか。BUMP OF CHIKENにも「名前があったなぁ 白くて 背の高い花」と歌われていたり、ユーミンも曲にしているというから、フォトジェニックならぬ、歌ジェニックな花なのかもしれない。

確かに、ハルジオンがそこにあるだけで、風景がノスタルジックなものに変わってしまう……ような気がする。

子どもの頃に好きだった食べ物のように、匂いや味をきっかけに遠い記憶がよみがえるといった経験を、この花ももたらすのかもしれない。あまりにも長い間ともに生きてきたものだから、ふと気づいてじっと見つめたりしたそのときに、視覚が何かのボタンを押して、さまざまな思い出が蘇える……ような気がするのかもしれない。

下の青いお花はヨーロッパ原産のオオイヌフグリ。花言葉は「信頼」「神聖」「清らか」「忠実」。

こちらも空き地なんかに群生しているのを見かける人も多いはず。日本に来たのは明治時代とのことで、ヨーロッパでは「ヴェロニカ・ペルシカ」(Veronica persica)と呼ばれている。欧米では「Bird’s-eye」(鳥の目)なんていう愛らしい別名で呼ばれることもあるこの花が日本ではなぜこのような意味を持つようになったのか理解に苦しむ。
小さくて海の底みたいに深い青い小花、個人的には大好きな野草。

この黄色いお花はヘビイチゴかなぁ。

日本のノスタルジックな風景には欠かせない、実はすごいマニアまでいるブロック塀とすずらん、その下の石塀でたくましく花を咲かせる野草をパシャリ。

そこにも、ここにも、野草が元気いっぱいに咲いている。そのバラエティと美しさ、鮮やかさは、どうしていつもちゃんと見てあげられてなかったんだろう、という自分の余裕のなさを思い出させてくれるパワーを持っている。

遠くへ行かなくても、お花畑はあなたのすぐ近くにあるんだよ、なんて、なんだか「幸福」みたいな話ですね。

<参考サイト>

植物園へようこそ!
野草を楽しむホームページ・・・花の色別野草図鑑
野生植物図鑑
花言葉事典

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