個人的に、書店は、手芸店に並んで買い物だけではなくて雰囲気を楽しみたくてつい足を運んでしまう存在。
多品種少量生産のものがぎっしりと棚に並んでいるタイプの空間にどうも弱いみたいです。
さて、そんな「書店萌え」だけでなく、世界中の文学ファンが観光にやってくるのが、ここ、パリの「シェイクスピア・アンド・カンパニー書店」である。
ここは第二次大戦前は、ヘミングウェイやフィッツジェラルドなどのロスト・ジェネレーションの作家たちが集い、1950年代にはギンスバーグやウィリアム・バロウズといったビート・ジェネレーションの作家たちの拠点となった伝説の書店で、ユリシーズを最初に出版した版元としても歴史に名をとどめている。
天井までぎっしりと並ぶ本、本、本…。店内に漂う濃密な「本好き」オーラがたまらない。
それでは、二階に行ってみましょう。
階段エリアにも本。そしてちょっとしたギャラリーエリア。みんなが踏みすぎて色が褪せた階段の「あしあと」もご愛嬌。
二階はいくつかの小部屋に分割されているのだけど、窓辺にはいかにも作家が好みそうな執筆エリアの名残りが。
ピアノに居心地の良さそうなソファ。20世紀初頭のパリの文学サロンが幻視できるエリア。
ちょっと上に目をやると壁のいたるところに作家のポートレイトや写真。ここでは「余白」は埋められるべき存在。こういうところが、白い紙を文字で埋め尽くすことに取り憑かれた作家たちが安心させるのかもしれない。
児童書コーナーの一角。やっぱり余白が埋められている(笑)。
そして、有名な「見知らぬ人に冷たくするな。 変装した天使かも知れないから。」という書店の精神ともいえる言葉が書かれた壁。とてもいい、心に刻みたいコピー。
ぎっしりと詰め込まれた本と、あめ色に変色した使い込まれた棚と、作家たちの歴史が濃密な空気を醸し出す本好きの聖地。一見雑然とした空間は、あらゆるものを許容しようという寛容さがかたちを変えたものなのかもしれず、不思議と、ふらりと立ち寄った異邦人にも、どこか懐かしい「馴染みの書店」に来たような感覚をもたらせてくれるのだった。
<シェイクスピア アンド カンパニー書店>
Shakespeare and Company
http://www.shakespeareandcompany.com
ウェブサイトも店内の雰囲気をそのまま伝えるデザインで秀逸!
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