乙女チップス
カワイイもの、古いものを集めた乙女派ウェブマガジン
お手ごろなミニ版画、蔵書票を集めたい!

先日、アメリカに留学中の後輩からこんなお土産をもらった。

小鳥の繊細なイラストが付いたトランプ大のシールが18枚、同じイラストの紙製のケースに入っている。

「かわいい!……でもこれ、何に使うの?」

「これ、エクスリブリスっていうんです。シールの余白に自分の名前を書いて、蔵書に貼るらしいです。自分の持ち物ですっていう意味で」

「アメリカでは蔵書にシール貼るのが一般的?」

「うーん、あまりポピュラーではないみたい(笑)。でも古いのを集めている人はいるらしいですよ」

EXLIBRIS

もらったのは、サンフランシスコの文具店、Cavallini & Co.(カヴァリーニ アンド コー)製のエクスリブリス。今ではポピュラーではないとはいえ、文具店のラインナップに並んでいることを考えると、欧米ではなじみの深いものなのかもしれない。

調べてみると、やっぱりエクスリブリスの起源はヨーロッパだった。エクスリブリス(EX LIBLIS)はラテン語で「だれそれの蔵書の中の書物」という意味。所蔵者の名前を美しい絵や図案とともに版画にして刷り、表紙の内側の見返し部分に貼って所有者を明らかにするための小さな紙片だ。現在のような体裁になったのは活版印刷本が普及しはじめた直後のドイツで、1480年代ごろに発生したというのが定説になっている。16世紀にはハンス・ホルバインのような巨匠もエクスリブリスを製作したとか。

その後エクスリブリスはヨーロッパ全土に広がり、日本には明治33年に紹介された。英語圏では「Bookplate」ともいい、日本では「蔵書票」という名称が一般的。現在では実用品というよりも、ミニ版画や手ごろな美術品としてコレクションしている人が多いという。……というか、蔵書票って古書好きには大変有名らしいことをアメリカ土産を発端にいまさら知ったうかつな私です。しょっちゅう古本屋さんをぶらついているくせにぃ!

exlibris2

アメリカの写真共有サイトFlickrにはexliblisのコミュニティも。

自分の蔵書だと証明するための、美しい版画と名前入りの小紙片ってなんだかとてもロマンチック。自分の持ち物に名前を入れるなんて大人になってからはほとんどないけど、絶対に誰にもあげたくなくない宝物みたいな本に貼ったりしてみたい。本ってそれだけ特別なものであってもいいような気がする。

ということで、俄然興味が出た私は、シールではなくちゃんとした版画のものが欲しくなり、都内では特に蔵書票の扱いが多いという神保町の「呂古書房」に行ってみた。呂古書房は、豆本、限定本、そして蔵書票に千代紙など、美術に近いラインナップが魅力の乙女な古書店。訪れてみると、1000円~1500円くらいの手ごろな値段で国内外の蔵書票がたくさん販売されていた(もちろん、有名作家のものは高い)。お店の方によると、お値段も手ごろで限定感もあるため、プレゼントにする人も多いという。

さんざん迷って私は鳥の親子のイラストが可愛い蔵書票を購入。ひらがなで「えくすりぶりす」って書いてあるのもカワイイ。「さとう実」さんの蔵書だと証明するためにオリジナルで作られたミニ版画。小さな額に入れて飾りたい!

ちなみに、上の写真は呂古書房の包装紙。武井武雄のキャラクター「ラムラム王」がプリントされていて、ひそかに人気らしい。

それにしてもこの蔵書票、今まで見返しに貼ってあるのを見たことがないなぁ、と思いつつ帰宅。家の中の古本をいくつかひっくり返してみたが、やっぱり見返しはまっさらだった。歴史も浅い日本では一般的になる前に、コレクターズアイテム化しちゃったのかもしれないなぁ……と諦めかけたところへ、数年前、イギリスの古本の町ヘイ・オン・ワイに行って一冊の植物図鑑を購入したことを思い出した。ヨーロッパの古書なら貼ってあるかも! とさっそく本棚から引っ張り出してみると……

発見!!

<関連リンク>

呂古書房

Cavallini & Co.

蔵書票(wikipedia)

*参考文献 『蔵書票の美』(樋田直人,小学館,昭和61年発行)

<関連記事>

山の中の古本王国、ヘイ・オン・ワイ

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